重心とストライド

先日、茂木ふれあいマラソンに出たときにゴールまで500mというところでゲストランナーの宮原さんとすれ違いました。



宮原さんは他のランナーといっしょに走っていたのですが、ふとこちらを見た瞬間に「あ!!」と指をさして走り寄ってきました。わたしはゴールまであと少しということで必死にラストスパートをしていたのですが、ゲストランナーがわざわざ急にこちらに駆け寄ってきたのでいったい何事かとびっくりしてスピードを落として待ち構えてしまったのですが、宮原さんは「腕が上がり過ぎだからもっと下げた方がいいよ!」とだけ言い残してさっさと立ち去っていきました(笑)


えー、なんだそれwと思わず笑いながらふたたびゴールに向かって走り始めたのですが、そう言われてみると腕が常に胸くらいの位置にあってたしかにちょっと上がり過ぎのような気もしたのでそこからは腰より少し上くらいまで下げてゴールまでダッシュしました。そのときはゴールまでちょっとしか距離がなかったので腕を下げたことによる影響はほとんど気にならなかったのですが、なんとなく走りやすかった気がしたのでこれからは少し意識して腕を下げるようにしてみようと思いました。


で、茂木を走ったその日からなぜか体調を崩していたためにしばらく走れなかったのですが、やっと走れそうなところまで回復ために今夜は走りに行ってきました。今日は4日ぶりのランニングでしたのでちょっとペースを上げて走ってみたのですが、その際に茂木で指摘してもらったとおり腕の位置を下げて走ってみることにしました。

走り出してすぐは「腕を下げてるとあまりスピードが出ないなー」なんて思いながら走っていたのですが、腕の位置を意識しているうちに腕の位置で重心が変わっていることに気付きました。腕の位置が高いと重心も高めになるし、逆に腕を低くすれば重心も低くなります。

さらに腕の位置を低く保ちながら走って腕時計でペースを確認したところ体感よりもペースが速いことに気付いたのです。つまり腕の位置を低くするとスピードが出ないわけではなく、スピードは出ているけれどそれがどうも体感ペースとずれているのです。


最初は腕の位置を変えただけでなんでこんな違いが生まれるのかわからなくて走りながらあれこれ考えていたのですが、ふと2年前に坂を上る練習をしたときのことを思い出して違いが生じる原因がわかりました。


話は少し昔のことになるのですが、2年前に坂が苦手だったわたしはアップダウンのきつい周回コースで毎週練習していました。

最初は上りと下りの走り方がまったくわからなくて10kmも走るとくたくたになってしまっていましたが、走っているうちに上りと下りを走るときにはそれぞれ適した走り方があることに気付きました。具体的に言うと、上りはピッチを上げ、下りはストライドを広げて走るといいということがわかったのです。


まず上りを走るときですが、背筋を伸ばして胸を張り重心を高めにとって走ると走りやすいと感じました。
では「背筋を伸ばして胸を張り重心を高めにとる」とどうなるのかというと自然とピッチがあがります。このあたりの感覚については自分自身の中では納得できているのですが言葉でそれを説明するのはむずかしいです。ただ、感覚的には重心が高い方が足の取り回しがよくなってピッチを上げやすくなり、逆にストライドは広げにくくなると感じています。

これは自転車に置き換えて考えればわかりやすいのですが、上り坂ではギアを落として回転を上げる方がのぼりやすいのと同じで、走るときもストライドは抑えてピッチを上げた方が走りやすいのかなと。


逆に、下りを走るときは重心を低めに据えて下りの勢いを利用して一歩一歩思い切り踏み込んで走ると走りやすいです。
ただ、下りの斜度がきつすぎる(20%くらい)と足が追いつかなくなって転びそうになるのでそのくらいの斜度の場合は下りと同じ走り方が有効です。ふつうのロードレースでそんな坂を走ることはないと思いますが、トレイルや登山マラソンとかだとわりとざらにありそうです。


ちょっとごちゃごちゃ書いてしまいましたが、ピッチをあげるときは重心を高く、逆にストライドを広くとるときは重心を低くした方がいいというのがそのとき得た教訓でした。そしてこの走り方をしばらく意識して練習していたのですが、しばらく続けているうちに自然とそういう走りができるようになったためにアップダウンで重心を変えていることをあまり意識することがなくなっていました。今回あらためて自分の走りを意識してチェックしてみると、たしかに上り坂と下り坂で重心を変えていることが確認できました。


ここでちょっと話を変えるのですが、ランナーは「ストライドを長く取ることでスピードを出すタイプ」なのか、それとも「ピッチを増やすことでスピードを出すタイプ」なのかで2つに分類することができます。マラソンを始めたころはそんなことを考えたこともなかったのですが、今年の1月にふとストライドとピッチについて考える機会があって自分がピッチ派なのかストライド派なのか気になりだしました。そしてずっとためていた過去のデータを引っ張り出してどちらなのかを調べてみたのです。


結果としては意外にもわたしはストライド寄りだということでとてもびっくりしたのですが、ためしにハーフマラソンに出たときに同じペースで走っている人のピッチと自分のピッチを聞き比べてみたところものすごい差があることがわかりました。隣を走っていた人はわたしが10歩踏み出すあいだに12歩から13歩を踏み出していました。

そのことが非常にショックだったために、わたしは「これからはピッチが増えるような練習をしよう」と思い立ち、意識的にピッチを増やすような走り方の練習をしました。ためしにピッチをあげようとしてみてわかったのですが、少しピッチをあげるだけでも心肺への負担がグッとあがります。

最初は本当につらかったものの、慣れてくるとピッチはどんどんあがりました。
150回/分だったピッチは180~190回/分まであがり、そのくらいであれば大して苦でもなく走れるようになったのです。

ところがそれに呼応するかのようにストライドはどんどん短くなってしまったために、トータルではピッチが速くなった分よりもストライドが短くなった分が影響してタイムは遅くなる一方でした。さすがにこれはまずいなと思ってピッチやストライドを前の状態に戻そうと努力したものの、やり方がまずかったのかピッチもストライドも元に戻すことはできませんでした。そしていまに至るわけです。


ここで話は最初に戻るのですが、今回宮原さんに腕の位置が高いと指摘されてわかったのですがわたしがピッチをあげる練習をしたときにやっていたことというのは重心を高い位置に保ったまま走る練習だったんだなということです。その当時はピッチをあげる練習→ただ足を速く動かしてピッチをあげる練習のことだと思っていたのですが、実際にやっていたことは重心の位置を変えて走っていただけだったと。

だからピッチを落としてもいいからストライドを長くしたいというのであれば重心を低く抑えたまま走る練習をすればよかったのですが、そもそもピッチをあげるために重心を高くしたことにさえわたしは気付いていなかったためにストライドを広くとるためにストレッチで体を柔らかくして歩幅を広く取ろうと練習するという見当違いのことをしていたのです。

もちろんそんな的外れの努力は実を結ぶわけもなく、どれだけがんばってもストライドは120cm以上にのびることはほとんどありませんでした。


そして今日、やっとストライドを広く取る方法、つまり前の走り方に戻る方法を見つけました。

がんばってここまでピッチを速くしたんだからこのままでもいいんじゃないかな?とも思ったのですが、本来のわたしの走り方はストライド型だったと考えればここで本来の走り方に立ち戻って練習したらどのくらいのタイムが出せるようになるのかを試してみたいなと思うのです。


そんなわけで今日からストライドをのばすために重心を低く保ったまま走る練習をはじめました。
ピッチは多少落ちてもいいのでストライドをがっつりのばしてタイムがどれだけ変わるのかを調査したいと思います。走り方を変えるわけなので結果が出るのは来年に入ってからでしょうか。ちなみに今日は10.8km走ったのですが平均ストライドは127cmでした。ストライドを伸ばそうと意識したわけではないのですが普段に比べると1.2倍くらいに伸びてます。

とりあえず5kmや10kmくらいであればストライドが150cmくらいまでのびるようになるまで意識して練習してみようと思います。ちなみにいまはストライドが100cm~120cmくらいなので150cmというのはすごい遠いです。